租税条約とは、二重課税の調整、脱税および租税回避への対応等を通じ、二国間の健全な投資・経済交流の促進を図る目的で、二国間で締結される文書による合意をいいます。
租税条約では、居住者の範囲、所得の源泉地をはじめ、源泉税の制限税率や課税権の範囲、および両国間の相互協力など、二国間の租税に関する基本的な取り決めが規定として明らかにされています。
租税条約の規定は国内法に優先して適用されることになりますが、制限税率の適用等、一定の届け出が必要となる場合があるので注意が必要です。海外との取引で税務上の取扱いが問題となる場合には、まず国内法での取り扱いを確認し、その後、租税条約での取り扱いを確認することになります。
租税条約を締結する主な目的は次のとおりです。
1.両国間の課税権の調整(特に投資所得を中心に源泉地国での課税を軽減)
2.二重課税の回避
3.脱税防止
4.税務当局間の情報提供、相互協議
租税条約の対象となる税目は、日本側では所得税および法人税であり、相手国ではこれらに相当する「所得に対する税」となります。また、租税条約の対象者は一般に「一方又は双方の締約国の居住者」となりますが、原則として「相手国の居住者」に適用されることがほとんどであるため、非居住者および外国法人が主な対象者であると言えます。なお、近年締結される租税条約では、条約の恩典を与えるべきでない者または所得を除外するために、一定の要件を満たした「適格者」にしか適用がないよう手当てされている条項(いわゆる「特典制限条項」)が盛り込まれているものが増えています(日米、日英、日仏、日豪の租税条約など)ので、租税条約の適用の判定については注意が必要です。