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欠損金の繰越・繰り戻し

法人税法は、一定の要件を満たす欠損金について、制限を設けた上で、数事業年度に渡って通算ができるように、次の繰越しおよび繰戻しに関する措置を講じています。

1. 欠損金の繰越しに関する制度

(1)青色欠損金の繰越し
各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度で青色申告である確定申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額がある場合には、各事業年度の所得の金額から控除することができます。なお、この場合、欠損金の生じた事業年度からその欠損金額を所得金額から控除する事業年度まで連続して確定申告書を提出することが求められています。

(2)災害損失欠損金の繰越し
各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において発生した災害により生じた一定の損失の額に相当する金額について、青色申告書を提出しなかった事業年度の欠損金であっても、一定の条件のもと、各事業年度の所得の金額から控除できます。ここでいう災害により生じた損失とは、棚卸資産、固定資産および一定の繰延資産について生じた損失に限られており、災害の発生した事業年度に損失額を損金経理することが、繰越しの要件として求められています。

(3)会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入
会社更生法等の規定による更生手続開始の決定があった場合、あるいは、民事再生法の規定による再生手続開始の決定等があった場合において、債務免除を受けたなど一定のケースに該当する事実が生じたときは、その事業年度前の各事業年度において生じた一定の欠損金額のうち、当該債務免除等による利益の合計額に達するまでの金額につき、当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入することができます。この場合、上述の青色欠損金および災害損失欠損金の規定上、「期限切れ」となってしまった欠損金額を、債務免除等に基づく利益金額を上限として、これらの欠損金額の額に優先して損金の額に算入することができます。

なお、2010年度税制改正により、法人が解散した場合において、残余財産がないと見込まれるときは、その清算中に終了する事業年度前の各事業年度において、生じた「期限切れ」の欠損金につき、青色欠損金等の控除後の所得の金額を限度として、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされました。

2. 欠損金の繰戻しに関する制度
欠損金が生じた事業年度(「欠損事業年度」)の開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(「還付所得事業年度))の所得に対する法人税額に、還付所得事業年度の所得金額のうちに占める欠損事業年度の欠損金額の割合を乗じて計算された金額につき、還付を請求することが認められています。

ただし、この欠損金の繰戻しによる還付制度は、2012年3月31日までに終了する各事業年度において生じた欠損金については、次のケースを除いて、その適用が停止されています。

(1)一定の中小企業者等に該当する場合
(2)解散等、一定の事実が生じた場合